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福岡家庭裁判所 昭和36年(家イ)223号 命令

申立人 松川与助(仮名) 外四名

相手方 松川信輔(仮名)

上記当事者間の当庁昭和三六年(家イ)第二二三号相続回復調停申立事件について、当調停委員会は、調停のため必要があると認め、次のとおり命令する。相手方において、もしこの命令に違反したときは、五、〇〇〇円以下の過料の制裁を受けることがある。

主文

相手方は、福岡市大字春吉字久恵○○○番地宅地一一二坪につき売買抵当権の設定等一切の処分行為をしてはならない。

(家事審判官 藤田哲夫)

事件の実情

一、申立の趣旨に記載した相手方が昭和三十六年三月十一日登記原因昭和三十年七月十九日贈与による取得したる不動産は前所有者である福岡市大字春吉○○○番地山田次郎と申立人の亡夫松川昇との間に申立人の父が原告となつて訴訟を提起し、第一審に於て父が勝訴となつたものであるが、其の後種々の事情により(其の事情は調停に於て詳述するから茲に省略する)其の儘となつていたものであるが、当時の当事者である申立人等の父も死亡又山田次郎も死亡したのである処が、山田次郎の妻加代は相手方である松川信輔を相手方として、福岡簡易裁判所に調停申立をなし(申立の趣旨は右当事者間の昭和三〇年(ユ)第三〇〇号賃借契約締結に関する事件)調停の結果申立人が相手方の所持する当時の調書に記載してあつた条項によると、確かに昭和十二年七月十九日付別紙目録記載物件を贈与云々と記載してあつた事実よりして、昭和十二年七月十九日附とあるは前記申立人の亡夫が勝訴した時の物件即ち、本件の不動産であるが以上の様に受贈者は、申立人の亡夫である以上当然本件の不動産は遺産として、相続すべきものであると思料するが前示調停条項に贈与し現に相手方の(松川信輔を指す)所有に属する事を確認するとあるは逸脱した調停条項であると思料する、其の条項に基いて相手方は申立趣旨に記載の通り、所有権移転登記を完了したものである。申立人松川与助は本件宅地内に建物を有し、又亡父の遺産である居宅もあつて(亡父の遺産については、別途遺産分割の申立をなしている)各々申立人並に相手方間に利害関係があるが、相手方は本件不動産が目下相手方の所有名義にあるから、前示亡父の遺差である家屋を取毀し、本件の宅地内に相手方はアパートを建設すべく、準備中であるが本件に関しても出来得れば、円満解決を申立人等に於ても望む処であるが、申立人等の希望に応じないので本申立に及ぶ。

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